『春をかさねて』『あなたの瞳に話せたら』舞台挨拶レポート - 小田原シネマ館 | ODAWARA CINEMA
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『春をかさねて』『あなたの瞳に話せたら』舞台挨拶レポート

2025年3月6日 舞台挨拶
『春をかさねて』『あなたの瞳に話せたら』

3月6日、佐藤そのみ監督の舞台挨拶が小田原シネマ館で行われました。
当日は多くのお客様にお集まりいただき、客席はほぼ満席でした。

『春をかさねて』は東日本大震災で甚大な被害を受けた宮城県石巻市大川地区を舞台に、震災で妹を失った2人の女子中学生の繊細な心の揺れをみずみずしく描いた作品です。2019年に製作されました。監督は日本芸術大学映画学科を出ており、小学校6年生の頃から絵や小説を書くのが好きでいつか自分の生まれ育った大川地区で映画をとりたいと思っていたそうです。

そして、2011年東日本大震災。
監督も、小学校2年生だった妹さんを失ってしまったそうです。
震災から8年後、いつか大好きな大川地区で映画がとりたいという思いが蘇り、それならば震災をもとに映画を作ろうと決心したそうです。

『春をかさねて』は震災で妹を亡くした14歳の祐未役を演じた斎藤小枝さんは石巻市出身であり、マスコミ役の方は当時震災でニュースを報道した本当のマスコミの方たちだそうです。そして祐未のお父さん役の方は実際に娘さんを亡くされていて、彼の劇中のセリフはご自身の言葉であったそうです。
祐未の幼なじみで同じく妹を亡くしたれい役の50%は監督ご自身が投影されているとのことでした。

そしてこの物語では友情が描かれています。監督は、震災後に人と人との間に距離ができてしまったと感じておりました。そんな人間関係を、映画の中では友人同士の仲直りという形で描かれており、ここにも監督の思いが詰まっています。

『あなたの瞳に話せたら』こちらは監督の卒業制作で作られた作品でした。
『春をかさねて』で描ききれなかった部分がドキュメンタリーとして作られています。

この作品は手紙を主軸に描かれています。
当時マスコミの方に何度もカメラをむけられたこと、手紙の方が亡くなった方の生前がより思い浮かぶのではないかと手紙をテーマにしたそうです。
また撮影は台風の被害にあわれた地域にも足を運んだそうです。
監督は地元の人を傷つけないか、という思いからこの作品を2年間封印していたそうです。しかしだんだんと周りから上映希望があり考えが変わり上映に至ったということです。

【お客様からの質問】

Q:遺族の方で手紙をかけないという方はいませんでしたか
A:未だにおもてに出られない、手紙は書けないという方がいました。

Q:観光で行こうと思うが受け入れてくれるでしょうか
A:人それぞれでまだ受け入れられない人もいます。
私(監督)はどんどん来てほしい。元々は被災地ではないしたくさんの人にこの町の魅力を知ってほしいです。

Q:今後の活動は
A:30分短編の『スリーピング・スワン』という作品が公開予定です。
こちらは35歳以下対象の監督がオーディションを受けて選ばれたのち、プロのスタッフさんに撮影していただきました。

短い時間でしたがとても貴重なお話を聞くことができました。当時、人との間に距離ができてしまったというお話がありましたが、人は辛いことにあうと心の安定がとれなくなってしまいます。そしていつの間にか人との間にも距離が…。もちろんみながみなではないかもしれませんが
今もどこかで自然災害はおきています。いつ自分自身にふりかかるかもわかりません。
また災害にあわれた方々の気持ちはわかろうと思ってもわかるものではありません。
しかし記憶に残すことはできます。
こうして映画として
そして画面を通して人の痛みや傷を少しでも感じとれないでしょうか

佐藤そのみ監督、大川地区の皆様ありがとうございました。

3月11日祈りを込めて

登壇中の佐藤監督