
2025年4月5日『みんな笑え』上映後舞台挨拶が開催されました!
映画『みんな笑え』

【ストーリー】
人気もない、人望もない、野心もない、恋人もずっといない、五十歳の最低な落語家、太紋(野辺富三)。ある日売れない若手漫才師・希子(辻凪子)と出会ったことで、太紋は自分の人生を見つめ直していく―

画像左から鈴木太一監督、野辺富三さん
ゲストには鈴木太一監督、主演野辺富三さんをお迎えし、進行はプロデューサーのワダシンスケさんが務めました。
舞台挨拶の時間はたっぷりと40分!
じっくりとお話を伺うことができた貴重な時間となりました。
——してやったり
劇中ラストの衣装に身を包んだ野辺さんがお話を始めると、グッと気持ちが前のめりになります。
野辺さん
「2月8日から上映が始まり三か月目に入って、こうして小田原の皆さんにも観ていただけることになってとても嬉しい。
舞台を数多くやってきたけれど、大勢に名前を知られているわけではないので、このポスターだけを観て「落語家のドキュメンタリー?」と思う人もいます。「本当の落語の人?」そう言ってもらうと、してやったりというか、この役をやった甲斐を感じます。
劇場でこうして主演・野辺富三と直接自分でアピールすることができて嬉しいです。」
——生きてる実感
鈴木監督は各地の劇場で感想を直接書き込んでもらった熱いポスターを上半身に垂らしながらお話をしてくれました
鈴木監督
「上映が始まってから、東京から大阪・名古屋と各地のミニシアターを回っていて、先週は『みんな笑え』舞台挨拶の予定がぽっかりとなかった。それで、え?何のために生きてるの?と思った。(客席一同・笑)だからこうしていると、生きてる実感が湧きます。
この映画は野辺さんともう一人のプロデューサー沖正人さんが20年来の中で、沖さんが野辺さんを主演で世に出したい!この得体の知れない男を!!ということでお声がけいただきました。」
鈴木監督は小田原方面にくるとあることを思い出すとのこと。
なんと、脚本を書くために、野辺富三がどんな人間なのか観察する箱根旅行が、鈴木監督、野辺さん、沖プロデューサーの三人で行われたお話をしていただきました・・!
同日そしてほぼ同時刻に秋田県の映画館【御成座】で辻凪子さんが舞台挨拶を行っているお話に。(映画を観た人ならちょっとわくわくする状況じゃないですか?)
——センスで引っ張ってもらった。
鈴木監督
「濱本希子役・辻凪子さんは元からお笑いが好きで詳しい、高校生の頃から落語をしていた経歴もあります。漫才師役の辻さんに関しては、漫才監修ができなかったけれど、センスで引っ張ってもらいました。もう一人の主役と言っていいです。」
野辺さん
「主人公・斎藤太紋は自分と太一さん(鈴木監督)を足して二で割った人物。ほとんど役作りはしなかった。ワーとかウーとかいう役だけれど、ほぼそのまんまの私。自分じゃないものになってウガー!としているわけではなかった。濱本陽子役・片岡礼子さんや辻さんにどんどんと、ずけずけと壁を取っ払ってもらって、自分はおどおどと助けられた。」
野辺さんの言い草に、ワダさんが「一応、台本はありますからね!?」と客席にフォローを入れて笑いが起きます。
片岡さんの演技のお話になります。片岡さんは自分が納得していないと台詞が出てこないという、役者の技術の中で熱い気持ちで役に向き合っている方とのこと。
そこから話が繋がって、鈴木監督が周りの意見を全部聞きながら制作をするお話になりました。全意見を求めて、脚本は十何回も書き直したとのこと!
——独りよがりにならないように
鈴木監督
「何度映画を作って、独りよがりにならないようにしても、どうしても『この目線が抜けていたな』と思うからこそです。」
ここでお客さんから質問を募ることに。
【メインとなる落語の演目として、『抜け雀』『大工調べ』をチョイスした理由】
ワダプロデューサーを中心に回答いただきました。
まずキャスティングが野辺さんの次に父・斎藤勘造役の渡辺哲さんの順で決まり、様々な演目を思案したところ、『大工調べ』啖呵を切るのが渡辺さんらしい!という話になったこと、そして『大工調べ』の名調子が言えなくなってしまうというショッキングさでチョイス。
そして『抜け雀』は父子の話、芸事の話として勘造と太紋にリンクしているからチョイスしたとのことでした。
——野辺富三のドキュメンタリー
落語の演目のお話から撮影が実際の浅草演芸ホールで行われた話に繋がります。
朝早くからお客さんが入るまでの二時間あるかないかのスケジュールで行われたとのこと。
撮り順としては、鈴木監督が考えた太紋の新作落語の撮影が一番初めで・・・
野辺さん
「浅草演芸ホールの高座に座ると、頭が真っ白になってしまう。俳優として脚本を頭に入れて言えるようにしているはずなのに。浅草演芸ホールができてから何十年と、名だたる師匠たちがやってきた高座で、独特の空気、緊張感、時間を消費していく焦りで何も言えなくなってしまった。そして最後の撮影がラストの『抜け雀』だった。太紋と同じような道、同じような心境を辿って役に向き合うことができました。」
鈴木監督
「そういう意味では野辺富三のドキュメンタリーと言えるかも?」
ドキュメンタリーと勘違いされる話から始まって、ドキュメンタリーなのかも?という見事な着地でした。
最後に写真撮影、そして恒例の「みんな」「笑え」コールアンドレスポンスで舞台挨拶は終了しました!

画像左から鈴木監督、野辺さん 野辺さんはMW(みんな笑え)ポーズをしています。出す指を四本ずつにしちゃったお茶目な瞬間。
終了後もご来場くださったお客様の話をひとりひとり伺ったり記念撮影をしたりと贅沢な時間になりました・・!
「この映画自体が、落語だね」お客さんの感想が直接聞けるのもまた貴重な時間です。
『みんな笑え』は4/10(木)まで上映中!※4/8(火)休館日
上映回数は残りわずかですが、ぜひとも!!ご覧ください。
観ると生きる気力が湧いてきて、何かに挑戦しようとする心を励まされる、今の時期にぴったりの一作です!
ちなみに作中で扱われる演目『抜け雀』の舞台は小田原宿なんですよ・・!
<クレジット>
出演:野辺富三 辻凪子 / 今野浩喜 今川宇宙 和田光沙 杉本凌士 / 片岡礼子 渡辺哲
監督・脚本:鈴木太一
日本/カラー/ステレオ/シネスコ/105分/©2024映画「みんな笑え」製作委員会
主催:小田原シネマ館
運営協力:FM小田原株式会社 / タウンニュース / 一般社団法人カフネ