割れた器、ぎこちない兄弟関係……「金継ぎ」で本当に修復されるもの——『繕い合う・こと』舞台挨拶レポート - 小田原シネマ館 | ODAWARA CINEMA
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割れた器、ぎこちない兄弟関係……「金継ぎ」で本当に修復されるもの——『繕い合う・こと』舞台挨拶レポート

映画『繕い合う・こと』の舞台挨拶が4月12日、13日と連日開催されました!

ゲストは両日ともに監督・脚本・主演・編集を務めた長屋和彰さん、プロデューサー・出演を務めた大沢真一郎さん、制作担当の白岡優さん。

今回は4月12日の舞台挨拶の模様をご紹介いたします!

映画『繕い合う・こと』

【ストーリー】
亡き父の跡を継ぎ[金継ぎ師]の道を選んだが、“ある”わだかまりを抱える兄【護】。
対して、これといった目標もなく、父の後を継いだ兄に対して焦りや羨望から苛立ちを覚えている弟【幹】
ある年の暮れ、例年通り大掃除をする為に護の住む実家へと帰省する幹。
幹は掃除の途中で父の遺品が無くなっていることに気が付く。その夜、護を問い質す幹、ぶつかり合う二人。
不器用な兄弟とその周りの人々が織りなす物語。

画像左から白岡優さん、長屋和彰さん、大沢真一郎さん

まず長屋さんから制作についてお話いただきました。

2022年の暮れに撮影された本作。破損した器を修復し金粉などで装飾をする伝統技法「金継ぎ」をモチーフにした兄弟関係の修復がテーマの映画。
今回ゲストで来ていただいた3名は皆さん俳優です。皆さんは2018年映画『カメラを止めるな!』の出演者。大沢さんは『カメラを止めるな!』ではプロデューサー役を務めていましたが、この作品で本当にプロデューサーになることに!
白岡さんは主に群馬(倉木宅)の撮影の手伝いをされたとのこと。

——リモート演出の先駆け?

群馬での撮影時、長屋さんがスマホを失くしてしまうトラブルがあったとのことで・・・

長屋さん
「今、リモートで監督が演出をするというやり方があるけれど、スマホを失くしたことで現場を離れなければならない事態になった。1日前に絵コンテを書いて『こういう感じで撮ってください!』とお願いして、それから撮ってもらったものを確認して『大丈夫です!』という形でリモート撮影をしてもらって。そういうことで大沢さんが監督したシーンがあります。」

——英断

本作は2025年1月に新宿K’s cinemaで封切り。小田原シネマ館は3館目の上映館です。
劇場で上映をする以前は数々の海外の映画祭に映画を応募していたとのこと。その結果が芳しくなかったため、日本の映画祭に向けて2023年に追加撮影が行われました

大沢さん
「元々120分の映画。最初は記者の役で、護に金継ぎのインタビューをするシーンがあって、それが夏の場面だったからそれだけ浮いているような状態だった。そのシーンをまるまるカット。それで1週間をぎゅっと煮詰めた作品になった。監督の英断でしたね。」

長屋さん
「劇中でお母さんの話は出てこないけれど、当初は病院のシーンでしていたんです。ただ実際に生きててそううまいことそんな会話をするかな?と思って。お客さんがそれぞれ考えて補完してくれるだろうと信じてまるまる切って、兄弟や先輩の関係をより強く見せました。」

——良い映画だなって

ここで白岡さんから長屋さんにご質問が。

白岡さん
「定点で引きの画の印象が強いけれど、元々こういう画が撮りたかったのか、それとも脚本を書いてからこういう画にしようと決めたんですか?

長屋さん
「両方ですね。自分が今まで観てきた映画で観ていて好きだったものがそういうものだったというのもありますし。家の中の画に関しては、亡くなった父親の視点として描きました。霊体で動いたりはせずにじっと見守ってる」

大沢さん
カメラの高さも父親の身長を意識していて。喧嘩するシーンが遠くで少し見下げる形になって少し違和感があるんです」

白岡さん
「ここに来る前にもう一度観たんですけど、やっぱり良い映画だなって。身内を褒めるようですけど(笑)」

撮影時のトラブルからシーンのこだわりまで語っていただき、あっという間にお時間になってしまいました。まだまだ話し足りていないところがあるそうですが・・・?

長屋さん
「話し足りてないこともたくさんありますが、パンフレットに載っていますのでぜひ!1,000円で販売しています!」

『繕い合う・こと』パンフレット 小田原シネマ館にて販売中!!!
長屋さん、弟・幹役黒住尚生さん、先輩・稲田勝也役菊池豪さんの鼎談の読み応えは鑑賞後の余韻にグッと沁みます。

記念撮影の時間を設けていただき、舞台挨拶は無事終了いたしました。

画像左から白岡優さん、長屋和彰さん、大沢真一郎さん。

『繕い合う・こと』は4/24(木)まで上映中! ※火曜休館日
年末年始のお話ですが、4月の年度初めに観るにもぴったりな作品です。
映し出される静かに流れる時間と人々の交流を観ていると、自ずと家族のことや自分自身のことを見つめ直す大切な時間になりますよ。

<クレジット>
企画・監督・脚本・編集:長屋和彰
プロデューサー:大沢真一郎
出演:長屋和彰、黒住尚生、菊池豪、山本由貴、ふくだみゆき、大沢真一郎、田村彰規、篠原篤、岡田雄樹(声の出演)、藤井圭(声の出演)、ジョルジョデコヤツ(声の出演)
2023/日本/89分/カラー/シネスコ/©2023 Mending Cracks

主催:小田原シネマ館
運営協力:FM小田原株式会社 / タウンニュース / 一般社団法人カフネ